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 バレエ「ダーナの泉」 総まとめ N0.2 

 公演についてはただの記録だけでなく、エピソードや、その時に思ったり感じた事も加えて、主に下記3つに分類して書いてみようと思う。

1.音楽 2.バレエ(主に筋立て・音楽との関係) 3.プロデュース


1.音楽
まずは音楽。今回の公演で当然ながら、最も大切で自分の関わる事の出来た部分が音楽だ。
だが、新作のバレエ音楽だけを発表するだけでなく、いきなりそれを実際のバレエと合わせようという大胆な企画でもある。全ては未知の世界であり、手探りの状態から始まった。

音楽をどの様な形にするかには幾つかの課題がある。
@会場は何処なのか? A生演奏なのか、録音を使うのか? B生演奏の場合、オーケストラピットを使うのかどうか? Cどの位の編成で行うのか? D誰に演奏してもらうのか? E使用楽器

@会場は何処なのか?
正直一番難しかったのが会場の確保。これについては後述するが、要は会場が決定しない限り何一つ進まない。予算的にも会場費がある程度抑えられる「国分寺市立いずみホール」(以後「いずみホール」)は候補の一つに挙げていた。が、私は2019年春頃の公演開催を予定していたが、此処は公共のホールで抽選はとっくに終了していた。ただ、キャンセルや空きがある場合もある。パソコンでくまなく調べていると、ゴールデンウイーク中に、たった1日だけ全日、空いている日が見つかった。決めるしかない。電話で空きを確認すると、その足で西国分寺まで仮予約に行き、全てが始まった。

A生演奏なのか、録音を使うのか?
自分にとって何十年もの想いを悔い無く音楽で表現する。生演奏を選択するのに何の迷いも無かった。と言うより全曲が新作なので、録音されたものが、そもそも無い(笑)
勿論以前、生演奏とコンピューターによる打ち込みで録音した曲が数曲あるが、今回は編成も異なり、スコアは作り直さなくてはならない。生演奏へのこだわりは、振付と指揮をされた江藤先生も強くあったので、この点はすぐ決まった。

B生演奏の場合、オーケストラピットを使うのか?
バレエを支えるオーケストラは通常、舞台すぐ下のオーケストラピットで演奏する。
けれどいくら生演奏とは言え、大人数のオケを頼むのは予算的にも無理でピットは使えない。そもそもピットがある会場は限られているし会場費も高めだ。では何処にオケを配置するか?という事は大きな問題だった。私が「いずみホール」を候補にしていたのは、このホールの舞台の形状が単なる長方形ではなくて奥が台形、つまり長方形+台形だった事だ。
この台形部分にオケを配置、その手前の長方形でバレエを踊ってもらってはどうか? このイメージを江藤先生に伝えた。先生もこういうスタイルでバレエをやった事はないけれど・・・と考えてはいらしたけれど、スペース的に踊れるだろうと仰って下さった。バレエダンサーも6名程度を考えていたので、先生のゴーサインで大まかな事は固まって来た。

Cどの位の編成で行うのか?
会場の大きさから編成を考える、という事も致し方無い所もあるが、その台形上で演奏してもらえる人数は12~15名といった所。

D誰に演奏してもらうのか?
この1年程前、インターネットで見つけた録音を専門にしているgaQdanに、作曲した曲の録音を依頼したばかりだった。こちらにお願いする事で話はすぐ進んだ。
何でも物事というものは繋がっていると思う。個人がオケなんて無理、と思えばそこで終わってしまうけど、自分で言うのもおかしいが、想いが強ければ、固い岩も少しずつは砕くものなのかもしれない。でも自分で動かないと何も始まらない。だからエネルギーは相当要るけれど、一歩一歩進むと協力して下さる方も増えて、道が少しずつ開いて行くと実感した・・・

E使用楽器
<1.少人数の編成→金管楽器をはずす悩み>
編成は管楽器4、ホルン1、弦楽器6、ハープ1、打楽器1~2名。漠然と決めてはみたものの、何か物足りなくてこれで表現できるのか?という気がしていた。
今回の様に、舞台にオケをのせて演奏する場合、使う楽器を選ばなくてはならない。
金管楽器、特にトロンボーンやチューバの様な低音楽器は、音が強過ぎて他の楽器とのバランスが取れないので使わないのが普通。けれど、こういう楽器は物語の中の色々な場面で、しばしば力強く効果的に登場する。時に恐怖や悲劇、朗々と歌い上げる場面等・・・何といっても音楽をしっかりと、豊かな音量で底辺から支えてくれる。ドラマチックなストーリーが好みの私としては、自分のイメージでスコアには当然金管を入れて書いて来てしまっている。欠落するこの金管パートをどうしたら良いのか?というのが悩みだった。
二人で踊る静かなパ・ドゥ・ドゥなどは元より金管は使っていないので、そういう曲を羅列してストーリーを度外視すれば可能ではあるけれど、それではつまらない。せめても打楽器奏者を2名にして、効果的に臨場感を出す事は考えていたが、まだまとまらなかった。

<2.作曲の先生の元へ>
思いあぐねて作曲の先生にご相談させて頂く事にした。先生は桐朋学園大学院大学教授で御多忙なのは承知、連絡を取るのも遠慮していたのだが、オケの編成は私にとっても公演の核となる大事な部分だし、もう方向を決めないといけない。今も思い出すのだが、先生が会って下さると仰ったその日、私は先生が全てのレッスンを終わられるのを待っていた。もう夜になり真っ暗、最後の生徒さんが帰られて、相当お疲れだったと思うのに、嫌な顔もされずに親身に私の相談に乗って下さった。そしてスコアを見て頂いた上で、最終的にトランペットを1名加えてはどうか?とのアドヴァイスを頂いた。私は金管を使うと、この編成ではバランスが崩れるのでは?と思い、敢えて使わないでいたが、トランペットを効果的に使えば臨場感も出る。先生にTrp.1本なら使っても大丈夫ですよ、と背中を押して頂けた時、何か胸のつかえが取れ踏み出せる思いがした。このご助言に感謝している。
打楽器奏者を何人にするかも懸念事項だったが、打楽器がたくさん登場する「四つの総」は今回どうしても使いたい曲であり、この曲、本来は打楽器奏者3名で書いている。書き直すにしてもせめても2名はスタンバイして欲しい。こうして計15名での編成が決まった。

<3.木管について>
オケでは普通、2管編成と言って、フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴット奏者は各2名だが、今回は1名ずつである。

*「フルピコの詩(うた)」という曲がある。これはダンサーが「フルピコ」という楽器を持って踊る場面で使う曲だ。その名の通り、フルートより更に高音のピッコロの音域まで出せる想像上の楽器だ。それで、フルート奏者2名のうち、1名にフルート、もう1名にピッコロを持ってもらい、流れる様に演奏してもらう事で、まるでダンサーが1つの楽器で演奏し踊るイメージを持っていた。それが管楽器奏者各1名なので出来ない。仕方なく、フルート奏者の部分を高音域の出るクラリネットで対応、つまり「フルピコ」ならぬ「クラピコの詩(うた)」と相成った。

*オーボエとコールアングレ、これも持ち替えて演奏してもらう事がある。以前、録音をした時は、まずオーボエの旋律を吹いてもらって録音、次にコールアングレの旋律を同じ奏者に吹いてもらい、編集で音を重ねてもらう事が出来た。でも今回は生演奏。これ以上奏者を増やす訳にも行かないので、コールアングレ部分は残念ながらカットする事になった。


【公演を終えて】
gaQdanは木管、弦楽器奏者で構成されていて、主に録音を行っている。こちらの希望を伝えるとハープ、打楽器、ホルン、トランペットの奏者も手配してメンバーを集めてくれた。それからはパート譜を作成して送ったりで大忙しだったが、果たして自分の書いたスコアが奏者に通じているのか、本当に理解されているのかは恥ずかしながら不安だらけだった。

指揮者の江藤先生は、振付も同時にされる方なので、毎週の様にバレエの練習日にお会いして、音源とスコアからイメージを共有出来ていた様に思う。が、演奏者とはそう会える訳では無い。しかも予算上、本番前の練習は1回と直前のリハーサルのみ。自分の音楽を検証するにはあまりにも練習回数が少なかったが止むを得なかった。こうしてとうとう本番を迎えた。

やはり生演奏は臨場感が断然違った。自分が思っていたよりずっと良く鳴ってくれ、音楽は私のイメージ近いものを表現して下さっていた。演奏者がプロフェッショナル集団であった事も大きい。しかしながら、生演奏であるが故に、直前まで思う様に行かない事もいろいろ発生してスリル満点ではあった!例えば、最初は指揮者を中心に、管と弦を左右に配置していたが、お互いの音が良く聴き取れないとの事で、直前にオケの配置換えをし、
それによってダンサーの振付も急遽変更したり、曲のテンポとダンサーの踊りが噛み合わなかったり・・・

公演が終わり、BDが出来て作曲の先生に見て頂いた。全体的によく出来ていたと言って頂けて嬉しかった。編成、2名の打楽器奏者、逡巡していた辺りの事もうまく解決出来て、舞台にオケをのせて踊るこの方式も、自分としては一つの新しいスタイルへの挑戦でもあったが、十分手応えも感じた。先生と話してやはり許されるならば、もう一息、弦の人数を増やして音を厚くしたい思いはあるが、全体的に少人数ながら各演奏者の方々には本当に頑張って頂き、心から感謝している。

正直、音があれっ?と思った箇所はあった。その事が残念と言うより、自分が書き足らず、奏者に伝え切れていなかったなら、自分の問題だと思う。でも、鳴らしたからこそ初めて気づいた事もあった。つまり良い勉強をさせてもらったのだとも思う。私はオケの曲でも、自身でコンピューターに打ち込み作曲するので、機械音ながら再生して音楽を聴く事が出来る。だが漠然と機械音で聴くのと生では大違い、気づかされる事ばかりだった。
次への一歩としよう。


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