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私とショパン

1998/11
投稿原稿「私とショパン」優秀賞受賞 音楽の友誌1998年11月号掲載


私の音楽の原点はショパンのエチュード

「えっ君まだショパンのエチュード弾いたことないの?」東京のM先生の初めてのピアノのレッスンで私はいきなりこう言われました。高校で上京、女子大に進んだ私ですが、20才過ぎた頃、M先生が音楽の素晴らしさや楽しさを温かく教えて下さる方と聞き、門を叩いた時の事です。「大事だよ…このエチュード。」「先生、時間がかかるかもしれませんが教えて下さい。」こうしてエチュードの勉強が始まりました。
フレーズの取り方、力の抜き方、曲の持つ微妙な色合いやニュアンスを先生は丁寧に教えて下さり、私は次第に曲にひき込まれていきました。(この和音の響き、青緑から緑青へ…)(耳かきの心地良さで)といった私流の解釈を楽譜に書き込み、つい消し忘れてレッスンに行っても先生はニコニコしていらっしゃいました。一応3年程で全曲を終りましたが私にはまだまだです。「もう一度最初からお願いします。」と2度目のレッスンが始まった頃、私に転機が訪れました。結婚・転勤・出産です。

関西から大きなお腹を抱えてやって来る私をいつも先生は温かく迎えて下さいましたが、やがて3人目の出産で子育てはピークに達し、レッスンに全く行けなくなりました。空白時間は辛い時もありましたが、子供を連れた公園で、吹く風にエオリアン・ハープを感じたり、きらめく水面や夕日に絶えずエチュードを感じている自分に気づき、これはとても幸せな事ではないかと思いました。まるでいつまでも溶ける事のない、透き通った上質のアメ玉を口の中でコロコロ転がしている、そんな感じにエチュードが聞こえていたのです。
今や末の息子も高校生。私は数年前から自分の手で何かを表現したい思いにかられ、作曲を勉強しています。地域でコンサートも開ける様になった今、つくづく思うのです。やはり私の音楽の原点は20数年前のショパンのエチュードにあるのではないかと、そして今日に至るまでの、そのゆるやかな音楽の出会いと流れに感謝の気持ちでいっぱいになるのです。

 



 
 
 

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