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アポロ13号
Vol.7

 スペースシャトルが飛ぶ時代、今更ながら何故「アポロ13号」なのか、なのだが、これはたまたま先週TVでこの映画を見たからである。
 普段私は映画を見ないが、この日ばかりはつい見てしまった。アポロが月面着陸した時、世界は興奮したが、その後打ち上げられたアポロ13号に事故が発生し、もしかしたら乗組員は地球に戻れなくなるかもしれないというニュースは、今度は世界を震撼させた。


 映画は出来るだけ事実に忠実に再現されたそうだ。打ち上げ直後から、すぐにトラブルが発生し、何とか補って月に向かおうとするものの、事態は深刻とみた地上NASAのチームの判断で、帰還が即刻決定される。とは言うものの、もはや帰還そのものが不可能に近かった。それでも何とかして生還させようとする地上NASAチームと、乗組員3人が次々襲いかかる危機=極限状態の中で「生」へののぞみを必死につなぐという話だ。

 一番印象的だったのは、酸素が船外に漏れるのを食い止めたものの、今度は増え続ける二酸化炭素を排出する時の話。例えば、規格の違う二つのものを繋ぎ合わせなければならなくなったとする。あなたならどうするか。丸と四角は繋ぎ合わせようと思ってもはまらない。けれど一刻も早くそこを繋がないと命にかかわる。その時NASAでは何人かを集め、今船内にある、使えそうなものを全部テーブルにかき集め、それらを組み合わせて応急装置を作らせ、その作り方を乗組員に正確に伝え、それがうまく作動して命を救った。


 そもそもなんで私がこの映画を見る気になったのか。それは多分その少し前に経験した登山にある。5月はちょっと標高のある山ではまだ残雪もあり、経験者がいないと危ない。先日私以外!は相当の経験者ぞろいで、ある山に登る機会があった。天気は良かったが思ったより雪は多く、途中登山道から見える向こうの雪の崖には亀裂も走っていた。3時間登ってあと1時間で頂上という時、岩場があり、やっとそれによじ登った時、ゴロッと遠雷が聞こえた。直後「はい、これまで。下りて!」のリーダーの声。それからはただただ樹林帯のある場所まで急ぐ。いつ雷がひどくなるのかと不安がつのった。突然ゴーッという音に振り返ると、登る時に見た雪の亀裂が崩壊してねずみ色の塊が谷に落ちて行くのが見えた。雪の景色は何処も同じように錯覚させ、ルートを見誤りそうになったが、一人の的確な判断ですぐ修正。別の一人が「今から雨が来るぞ、すぐ雨具着て!」と叫び、着終えた直後にザーッと来たのにはただ驚いた。彼には雨が来る瞬間がわかるらしい。


 「三人寄れば文殊の知恵」と言うがそれが危機的な状況や緊迫感あふれる現場なら、なおの事。世の中にはすごい人がいっぱいいる。月面着陸を夢見て月を素通りし、自分の命の為に戦わねばならなかった乗組員を思うと、登頂は別の機会にかなわぬ夢でもなさそうだ。
            

2003.5.31 岡本由利子

 


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