虹のはじまり
Vol.6
以前山登りを始めた話を書きましたね。今年は6月にコンサートもあり、その後、身内の病気の事やら重なって、半年以上山には行きませんでしたが・・・秋になって、小さな山一つと、最近では谷川岳に登って来ました。秋の山は危険なので、勿論リーダーについてですが、ずっと山に行っていなかったので、いつになく緊張しました。
谷川岳は特に気流の関係か、お天気の悪いことが多いので有名ですし・・それでも前日の雨があがって、まわりの山々は雨に洗われてスッキリと美しい姿を見せていました。が、やはり谷川岳の頂上付近だけは下界から眺めても雲に覆われていました。
お天気が悪かった場合、または自信のない人は頂上まで行かずに戻る、そういう事だったのですが、参加者の多くは頂上まで登ると言う・・・そう、まわりは強い人ばっかりだったのです。私は、最初は引き返す組のつもりだったのですが、うながされるままに頂上まで行く組に入ってしまいました。
最初は日も射し、景色も良かったのですが、だんだんあたりは霧に包まれて来ました。日帰りの山行なので、朝4時半過ぎには起きての参加でした。けれど東京からの移動時間がかかるので、そんなに早く登り始められる訳ではありません。きっともっと早く、朝一番で登って行った人達なのでしょう、次々下山者とすれ違います。ちょっと羨ましいなあ!そんな訳で、途中休みもあまり取りません。「予定通り、あと1時間で頂上。」と言われても、何だか頂上がすごく遠く思えて、まだかまだか、という気になりました。湿ってつるつるした石や泥の道を越えて、急な階段を過ぎたらやっと頂上に辿り着きました。
と思ったら、ものの5分位で昼食を取ってすぐ下山との話。そうね、これはいたしかたないわよね、帰れなくなったら大変。今来た道を転ばないように気をつけて下り始めました。
少し下った所で、突然誰かが大きな声で、叫びました。
「見て、虹! 虹が出ている!」
それは雨上がりの大きな虹でした。でも何より感動したのは、私たちが歩いている道の、すぐ左の谷から虹がわいている事でした。遠くの空にうっすら虹を見る事はある、けれどこんな間近に、しかも「虹のはじまり」部分を見る事が出来るなんて!
ぼんやりした色ではなく、鮮やかな、それも透き通るような七色を重ねた虹のアーチが、空に向かって架けられているのです。光の反射か、それは二重にも見え、山々の緑と深い谷を覆う霧の白の色の中で、何とも言えぬ幻想的な雰囲気をかもし出していました。
こんな幸せな一瞬はないかもしれない。これぞ深い山に入ったからこそ出会えたのですね。
2002.10.11
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