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高校のクラス会(その1)
Vol.8

 先日、女子大付属高校の同級会があった。18人出席だったかな?という事は、確か一クラス54人と記憶しているので3分の1が出席した事になるけど、あの頃は1クラスの人数が随分多かったのだ・・・今じゃ少人数学級なんて言葉があるのだから。クラスはA〜Fまで6クラスあって、卒業年次のわがEクラス担任は、物理を教える男の先生でニックネームは「プリン」先生。頬がプリプリッとしていたからという説もある。実はプリンの前にもう2文字がついていたが、先生の名誉の為にもここではあえて言わない・・・
 クラスカラーを言うなら、Eクラスは個性派がそろっていた。付属高校なので大部分がそのままエスカレーター式に女子大に上がるのに、他大学を受験した人もかなりいた。

 ところでプリン先生のモットーは自由教育。それと自分自身をしっかり持つ事だったのではないかな、と今振り返って思う。
 少し大人びて学校をハスに構えて見ている人、つまりあんまり学校にチャンと来なくても、自分を持っている生徒は大事にしていた。担任が出席日数にピリピリ、ガミガミしていたらクラスの雰囲気まで暗くなってしまう。そこにいくと全くのびのびしたクラスだった。


 印象的な事が記憶に残っている。それは今後の進路を含めた個人面談の日の事だ。先生の研究室は「プリン」にかけて、「プリンズホテル」と呼ばれていた。私の順番が来た。
 西日の差し込むプリンズホテルに入ると、先生はチラリと私を見て、「ウーン、君か・・・」とパラパラとノートをめくって「えーとまず出席日数だが、へえ、丈夫なんだね、欠席なしか、(それだけがとりえ。)遅刻は?これもなしか、(厳しい寮監のいる寮にいて通学時間3分なら当たり前。)で、大学の希望学科は?ああ史学科ね、ならまあ、君の希望通り行けるでしょう。(人気学科は英文、住居学科など。史学科は激戦圏外。)特に問題ないね。」
と、先生はパタンとノートを閉じて私に向かって言ったが、それからしばらく沈黙が続いた。私は何だかイヤな予感がした。しばらくして先生は私の顔を覗き込むように言った。
「けどねえ君、それで一体将来どうなりたいの?こうやってごりっぱに大学の志望学科にすんなり進んで、それでフツーの奥さんになってホントに君、それでいいわけ?」
来た!やっぱり来た!私はそう突っ込まれる予感がしていたのだ・・・

 私は地方から高校受験してこの学校に入学した。けれど、この幼稚園から大学までの一貫教育校の中では、「女性が一人の自立した人間として如何に生きてい行くべきか?」的なテーマが機会ある毎に語られていた。特に中学から入学した人達の意識は高く、先にも述べたように、自分の将来の夢の為に受験して飛び立とうとしている人もかなりいた。そこへいくと「おくて」というのか、私はまだなーんにもはっきりしたものなんか、自分に描けていなかったのだ。

「君は聞く所によれば、音楽好きらしいけど、どうなの、たとえば音大受験考えてみたら?」
「音楽は好きですけど、別に音大に行くつもりはありません。寮にはピアノありませんし・・・(本心:もう大学受験しなくて済む、ラッキー!と思って受験したんだワン!)」
そこで話は止まったと思う。けれどこの時の会話はその後ずーっと私の胸にトゲのように残っていて、消える事はなかった。(つづく)


2003.11.11 岡本由利子

 


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