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高校のクラス会(その2)
Vol.9

 音楽が好きとは書いたが、高校時代の私はまだ今ほどに音楽は好きではなかった。ただ妙な生真面目さで、3年間ピアノのレッスンにだけは通い続けようと決めていた。登校前か放課後、学校のピアノで約一時間練習する。レッスンは隔週の日曜日。その頃の恩師は千葉に住んでおり、二週に一度、川崎の学校から通うのは結構な一日仕事だ。ただ、遊びに行けなくても自分で決めた事はそう苦痛にならないもので続いた。だからと言ってそれで音楽がとりわけ好きになった訳でもない・・・かくして曖昧なまま大学生となり、師が変ってもピアノだけは細々続けて、やがてフツーの主婦となり、ある時作曲に出会い、音楽はひたひたとかけがえのないものになって来る。おん年38歳?やっぱりオクテかなぁ・・・


 さてやっとタイトルの「クラス会」。あれからかれこれ35年の歳月が流れた。友達の面影は残っていて思い出せるが、やはり皆その歳月を経た顔に変わっている。プリン先生は10歳位年上だったのだろうか、そう老け込みもせずあまり昔と変わらない。先生に個人面談での出来事を話し「先生の失望した顔が何年経っても消えなかった。」という話をしたら、
「え?僕そんな事言ったの?あの頃僕も若かったからねえ・・・」とボリボリ頭をかかれた。
 やがて一人一人の近況報告が始まると、あらためてそれぞれの直面している様々な問題に考えさせられる。丁度50代、自身の更年期障害など心と体の変調、親の介護等々・・・

 皮肉?にも、先生が目をかけていた早くから「自分」に目覚めていた人達はキャリアウーマンとなり、忙しくなかなか出席出来ず、主に我々「フツーの奥さん」が先生を囲み、この午後のひとときを過ごしていた。だが、あの時先生の仰った「フツー」とは一体何だったのだろう?こうやって年月が経ち、家庭の主婦をやって来ると、それはそう「なんでもない事」ではないのだ。この年にもなればさっき言ったように、事情は違えど、みんなありとあらゆる困難に向き合いながら暮らしている。それでも久々出会えばそこそこみんな元気?いや、元気そうに振舞い、実際水面下ではいろいろ抱えているのだ。「一日一日何とか過ぎる事が有難く思える。」そんな気持ちを共有出来るフツーの主婦で良かったと私は思う。

 ただ、もしたとえばキャリアウーマンのように、仕事をして来ている人達はどうだろう? 独身を貫いた人もあり、家庭を持った人もいて、同じ様な事情、悩みを抱えている場合もある。ただ大きく違う点は「仕事」という点で彼女達はスックと背骨が一本たてられるような「場所」がある事だ。そこへ行くと家庭の主婦というのは、こっちの事が終わればこちら、というように、自分の事は後回しで、とりとめもなく用事がある割には、自分自身の場が少ない。特に家族思いで真面目な人程そういう事になる。家族にはそれが当たり前になる。
(私?家族思いだと思っているけれど、突然吹っ飛んで自分の事に没頭しているかも・・・)


 先程私は「作曲に出会い、音楽がかけがえのないものになって」と書いたが、これは何も作曲が巧くなったとかいう話ではない。こうして時が経つと、自分が音楽をそばに感じていられる事自体が、とても幸せでかけがえのない事だと思う。これは辛い時には力だ。続けていれば何らか結実して来る場合もあるので、何か持っている事は支えになると思う。

 これから皆はそれぞれどう変わって行くのだろう? 次回は私がクラス会の当番だ。(終)


2003.12.12 岡本由利子

 


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