2008-09-21
(Sun)
【初めの一歩】
話が一段落し、石材店のご主人に、少し離れた所にある、大きな水車の回るお蕎麦屋さんに連れて行って頂いた。
そこで、興味深い話を聞いた。コンサート会場となる石蔵は、元は農協の米蔵だったらしい。戦争で爆撃を受け、この米蔵もB29による爆撃で大きな穴があいたそうだ。そういえば、蔵の壁にコンクリートでついだような所があったが
その部分だろうか。補修されてしまっていて、はっきり確認出来なかったけど。
農協は別の所に新しい倉庫を建て、この石蔵群は雑草がはびこり、荒れ果て、廃墟のようになっていたらしい。それを石材店のご主人が買い取り、ここに、この石蔵を活かしつつ、地元の芦野石を使い、新しい感覚の美術館を建設する事を思い立ったそうだ。某建築家に依頼した所、快く引き受けて下さり、しかもこの建物が、イタリアで建築の賞を頂くまでになった。
道理で、展示物を観にいらしている方もあるが、建物をじっくり眺めている人も見受けられる。遠く海外からのお客様も少なくないそうだ。
普通だったら、とうに取り壊されていただろう石蔵。
今、命を吹き込まれ、復活した石蔵。
「普通の音楽会でもいいんだけど、そこに何か石をテーマにしたものを盛り込んでもらえたら。」
先程の彫刻家の友人が言った。
「石は黙っていても向こうから何かを与えてくれる。」
石に関わって来た人達の、何気なく話す一言を、私も娘も一言も聞き逃すまいと耳を傾けていた。何をどう持って行くか、彼女はもう考え始めているのだろう。神話でどろどろとしたものをかきまぜ、垂らした一滴から日本の島をつくるようにスリリングな瞬間、すべての方向を決める大事な一瞬だ。 |